白い浜辺にぽつんと椅子がひとつ。
目の前にあるのは、どこまでも広がっていく静かで大きな海。
ここに座ってみたら、何が見えるのだろう。
あれ、椅子にだれかの後姿が見えますよ。
「すわっているのは だれかしら。」
白いネコさんに見えます。
その視線の先の海には・・・美味しそうな魚が飛び跳ねていた!
今度は大きなクマさんの背中。
これまた大きなクジラさんと会話を交わしているのでしょうか。
「おおきいねえ。」「クマさんもな。」
その椅子には、いつでも、誰でも座ることができるようです。
男の子が座れば、その広い海のかなたにおばあちゃんへの想いを馳せ、母と娘はお父さんの乗った見えぬ船に想いをめぐらせます。
時には誰も座っていない時もあります。そんな時は、誰にも見られていない海があります。
海は時間の流れと共に、その景色や色を変えたり、変わらなかったり。
みんなの想いを包み込み、何かを返したり返さなかったり。
いつでもそこに佇んでいます。
それぞれの海の景色を眺め、自分でも絵本の中の椅子に座って海を眺め。
すると、自分の手のひらにチョウチョがとまりにきた!?
内田麟太郎さんの言葉とnakabanさんの絵。
ふと気がつくと長い時間が過ぎてしまうような、美しく抒情あふれる絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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