「アラカルトの春」「料理女を探せ」「砂糖合戦」など4編を収録。
2007年刊行。短編ミステリー特集。料理や飲食店に関係する話が4篇。
・アラカルトの春 著:О・ヘンリー(1906)
・ママは賭ける 著:ジェイムス・ヤッフェ(1952)
・料理女を探せ 著:アガサ・クリスティ(1951)
・砂糖合戦 著:北村 薫(1989)
まるでコース料理のよう。
「アラカルトの春」は、料理屋のメニューをタイプライトで清書する女子の、純愛の話。極寒&極貧の大都会で、暦の上では春を迎えたが、まだまだ春は遠い。春の訪れを待ち望む必死な乙女心と、人が必死で耐え忍んでいる状況をあざ笑うかのような、洒脱な文章のコントラストが印象的。
どれも個性が強い話だが、「ママは賭ける」は、いくつになってもお母さんに勝てない息子と、いくつになっても息子を子ども扱いするお母さんの闘いと事件解決が混然一体となって、妙な味わい。
「料理女を探せ」は、名探偵ポアロもの。初期の作品だそうだ。彼はベルギー人だからか、独特の話し方が耳に残る。
トリックをいとも簡単に解いてしまうカッコいい話。
「砂糖合戦」は、80年代の日本の都会が舞台。先の3つが外国の、昔の話だったので、ようやく自分になじみがある世界に帰ってきた感じがする。
先の3つと違って、設定も犯罪内容もずいぶんセコイが、逆に言うと至って平和で、誰も死なないので安心して読める。
ただ、日常生活の中で、知らないうちに人に潜む闇の部分がどんどん大きくなって犯罪に繋がっていく怖さがある。生々しい。
どの話も曲者ぞろいで、読みごたえがある。
今と違う時代に遊ぶもよし、トリックを考えるのもよし、何も考えずにただただ話を愉しむのもよし。
贅沢な短編集である。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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