
乾千恵さんは、力強い、踊りだすような素晴らしい文字をお書きになります。脳性マヒのため身体が不自由なのですが、図書館を始めとするいろいろな場所で書展をされたり(お寺や野外でも!)、うまく回らない口で朗読をされたりと、不自由であることを感じさせないほどバイタリティーにあふれた素敵な女性です。1月に「月人 石」(福音館)と題する絵本を出版し、その書展が現在も各地で行なわれています。4月に滋賀県能登川町立図書館でも開催され、それが本書の企画の出発点です。 イラストレーターの黒田征太郎さんは、幼い頃、大阪から疎開で能登川に来ていました。“よそ者”だった黒田さんはなかなか馴染むことができず、いい思い出がなかったそうです。以来、能登川に足を向けることがありませんでした。しかし昨年、NHKの番組「課外授業ようこそ先輩」で久々に母校・能登川南小学校を訪れたのです。その番組を見て感動した能登川町立図書館の館長が黒田さんに開催中の乾さんの書展をぜひ見てほしいと手紙を書きました。そして「行かせてもらいます」と返事をした黒田さんを、当日、乾さんが出迎えたのでした。黒田さんは展示スペースに入るなり、「ええなぁ、これ」と乾さんの文字を見て言ったそうです。そして、その場で絵を描き始めました。そう、それをまとめたのが本書です。風、土、梟……12の文字に12の絵をつけたのです。文字と絵が出会ったことで、この楽しい絵本ができました。

書家とイラストレーターのコラボレーション作品です。
正直言えば、組み合わせのちぐはぐさにスルーしかけたのですが、黒田征太郎さんのこの本ができた説明を見て踏みとどまりました。
書家の乾千恵さんは脳性小児マヒで身体が不自由ながら、とてもダイナミックな書を書き、いろいろなイベントに参加する力強い方です。
その力強い乾さんの一文字一文字から様々なイマジネーションがわき上がります。
黒田さんはその乾さんの文字から思い浮かべたものを、黒田さんなりに形にしたのです。
同じ文字をデフォルメして、茶化したわけではありませんが、黒田さんは乾さんの文字から軽快な世界を受け取ったのです。
この発想はとても良いことだと思いました。
乾さんの文字を見て、黒田さんの絵と言葉を見て、ナルホドと思うのもよし、イヤイヤと思うのもよし。
そんな感覚で眺めると、楽しくなると思います。
(ヒラP21さん 50代・パパ 男の子13歳)
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