静かな山里に広がっている田んぼ。
絵本を読みながらちょっと想像してみる。
もし、自分がここに「かかし」として立ってみたとしたら…。
屋根も壁もなく、日差しも風も雨も直接受けながらじっと立っていると、いったい何が聞こえてくるんだろう。
この絵本は、「かかし」が聞いている音を描き出します。
そこには、私たちが知らないたくさんの音にあふれています。
ドッドド ド・ド・ド……
“ちょろ ちょろ ちょろん”
バシャ バシャ バシャシャ
ガリ ガリ ガリッ
シャららん シャららん
それは、風がなる音だったり、大地のつぶやきだったり。
あるいは、小さな虫たちのこえ?
音を聞いているだけでも、想像がふくらんでいきます。
さらに聞こえてくるのは、あらゆる生き物たちの鼓動。
そして、星の輝く音、はるか遠くから聞こえてくる宇宙のくちぶえ……。
ああ、こんなにもおしゃべりな地球の音。
作者の中野真典さんはどうやって聞き出したんだろう。
じっと立つ「かかし」が季節の中でつむいだ、静かでにぎやかな物語。
想像力をフル回転させて是非味わってみてください。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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