もりたろうさんは、ゆうびんやさんです。毎日せっせと歩いてゆうびんを配りながら、長いこと自動車に乗りたいと思っていました。そんなもりたろうさん、60歳で仕事をやめると、自動車教習所に通って免許証をもらいます。これでいつでも運転ができる!と張り切りますが、買えたのはおんぼろの自動車。けれどもペンキをぬったり壊れたところを修理すると…みるみるうちにステキな赤い自動車に変身!はじめてのお出かけは、町に住む孫の誕生日のお祝いへ。しかし町に着いた途端、事件に巻き込まれて、車を盗まれてしまいます。いったいどうなるのでしょう。
町へ向かう途中、坂道をがんばって上ったためにエンジンが焼けてしまったり、大きな通りに出るとたくさんの自動車が走っていてびゅんびゅん追い越されたり、自動車ならではのエピソードが詰まっていて、自動車好きの子どもたちをワクワクさせてくれる場面がいっぱい。いろいろな車が登場するので、好きな車を見つけて読むのも楽しいですね。また、自動車に乗れるようになったもりたろうさんの嬉しそうな様子からは、はじめてのことに挑戦するのはいくつになってもとっても楽しいことなんだということがじんわりと伝わってきます。
作者の大石真さんは、大好きな自動車を主人公にした楽しい絵本を作ってみたいと思っていたそうです。そんな時、家の前を、1台の赤いおんぼろ自動車をおじいさんがとても楽しそうな顔つきをして運転しているのを目にして、このもりたろうさんのお話が生まれたのだそう。北田卓史さんのユーモア溢れる温かなタッチのさし絵も魅力たっぷりで、表紙を見ただけで楽しそうなお話の雰囲気が伝わってくるよう。1969年の発売以来、50年近く読み継がれているロングセラー。昔も今もこれからも。ずっと親子で一緒に楽しんでほしい名作です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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