舞台はパリ。路地裏の静かな通りにひっそりとルリユールおじさんの店はあります。「ルリユール」とは手作りの製本のこと。ソフィーが大切にしていた植物の図鑑がばらばらになってしまい、途方にくれていると、「ルリユールおじさんのところへ行けば直してくれるよ。」という言葉を聞き、やっと探したのがこのお店だったのです。
おじさんの手によって、ソフィーの目の前で植物図鑑はどんどん修復され、生まれ変わっていきます。その細かい工程が紹介されている絵を見ながら「こんな丁寧な作業があるのか……」と感動せずにはいられません。なにせ製本職人は60もの工程を覚えなければならないそう。やがて、世界で1つだけの美しい植物図鑑が出来上がっていくのと同時に、ソフィーとおじさんとの交流、おじさんとやはり製本職人だった父を思い出していく様子などがとても丁寧に描かれていきます。
最後に金箔の文字が入って完成した瞬間。読者にも、その幸せな気持ちが伝わってきます。今では、全工程をマスターしている職人さんというのは一桁の数しかいないのだそう。そんな「魔法の手」で作られている本というのは、やっぱり存在感が格別なのです。憧れますよね……。
秋も深まる季節にぴったりの、本を愛するちょっと大人の為の絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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