しろ猫のシェリーはにんげんの家で大切に育てられていました。ある日、シェリーの前に一匹ののら猫が現れていいました。「すこしはおもてにでてみなよたのしいから」家から出たことのないシェリーは、のら猫に誘われてはじめて外の世界に飛び出します。
しろいねこのシェリーは飼い主のもとで大事にされ
贅沢に生活しています。
シェリーが日向ぼっこをしながら昼寝をしているところへ
迷い込んできたのは名前もない野良猫。
シェリーは「ひとりぼっちで名前もないなんてかわいそう」と言いますが
ノラ猫は「ノラ猫の方が気楽だよ。楽しいことがいっぱいあるし」と意にも介しません。
ノラ猫はゴミをあさったり すき間をくぐりぬけて行ったり
木に登ったり・・・と自由奔放。
シェリーはそんなノラ猫の姿が汚らしくて野蛮に映りますが
自分の知らない世界をいろいろ知っているノラ猫への興味が募り
一方ノラ猫はほとんど外に出ない世間知らずのシェリーのことを放っておけなくなってしまう。
全く違う境遇の2匹の猫たちが徐々に歩み寄ってゆく姿に
切ない感情がじんわりと湧いてきます。
『ねずみくんのチョッキ』などねずみくんシリーズの印象が強すぎて
初めて見たときにガース・ウイリアムスの絵本かと思いました。
なかえよしを&上野紀子コンビの作品とはとても思えないタッチ。
ねずみくんシリーズももちろん優しいイラストなんだけど
印象としては上野さんはコミカルタッチかな〜と思っていたので衝撃でした。
(でもよく考えたら『ちいちゃんのかげおくり』とかリアルタッチですよね。)
猫達の毛並み1本1本を丁寧に描かれていてすごく繊細さを感じられて
優しく切ないこのお話によくマッチしています。
可愛さを含みつつも写実的な猫の表情がなんとも言えません。
可愛がられ贅沢に暮らしながらも まさに“かごの中の鳥”のシェリー。
そんな彼女の本能を呼び起こしたノラ猫。
ノラ猫に会わなければそれまでの生活が“幸せ”に他ならなかったはずなのに
いざノラ猫の自由気ままさを知ってしまうと幸せってなんだろうと思う。
そんなシェリーの複雑な想いがよく伝わってくる絵本です。
このお話を読むとペットとして人間が動物を飼う事は
まさに人間のエゴ以外の何物でもないのだな〜と思わされ
胸が傷みますね〜〜(〜_〜;) (さえら♪さん 30代・ママ 女の子3歳)
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