むかしあるところに、子どものいない夫婦がいました。何年も子どもがほしいと思いつづけ、やっと子どもが生まれることになりました。ある日、奥さんが二階の窓からとなりを見ていると、庭のラプンツェルがどうしても食べたくなりました。しかし、それは魔法使いの庭で……。グリム童話を、バーナデット・ワッツが日本の読者のために描きおろしました。繊細でやさしいタッチの絵、物語を語るリズムのいい日本語です。読み聞かせに、また初めて出会うグリム童話としてもおすすめです。
バーナデット・ワッツの『ラプンツェル』にはいくつかのバージョンがあるようです。
1985年刊の相良守峯訳と、この福本友美子訳の他に1979年の大島かおり訳(佑学社刊)を知りました。
そして、1979年の佑学社版とこのBL出版版ではワッツが絵を書き直していて、まったく異質の作品になっていることに興味を持ちました。
佑学社版は『ヘーゼルとグレーテル』(相良守峯訳、岩波書店)と同じ、どちらかというと暗いイメージの絵で少し違和感を覚えるのに対して、このラプンツェルはメルヘンチックに仕上げられています。
魔女もラプンツェルに「裏切られる」までは、とても気品のある魔女として描かれているのが新鮮。
王子様もほのぼのとしていて、失明した後の不幸があっさりと描かれています。
前作があまり好意をもって受け入れられなかったからでしょうか。
相良守峯訳と大島かおり訳を比較できていないのですが、大島かおり訳では二人の子どもは出てきません。
バーナデット・ワッツの絵本には、いろいろな味わいがありますが、この絵本は安心感があります。
(ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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