前作「うんちっち」で強烈なインパクトを残した作者の新作の題名は「オオカミだー!」。表紙では、またいたずらっ子そうなうさぎが不敵な笑みを浮かべています。
題名からしても思い浮かぶのは「オオカミ少年」のお話。でもこの作者の手にかかると、ちょっと重くなりかねないこの題材も、こんなに軽快でウイットに富んだ愛らしい絵本になってしまうのです。
主人公はうさぎの子シモン。この子がまた悪い!散らかし放題の部屋でお母さんに怒られそうになると「オオカミだあ!」って叫ぶのです。うさぎの世界でこの言葉は禁句でしょう。もちろんお母さんは逃げ出します。そのすきにシモンは「やりたいほうだい しほうだい」。そして幼稚園でも、お父さんにも・・・とにかく「やりたいほうだい しほうだい」。そんなに調子に乗ると今にしっぺ返しが来るよ。そして、やっぱり・・・。
散らかった部屋で自慢気な顔のシモンを見て「あなたそっくり!」と息子に言うと喜ぶし、言っちゃ行けない事を繰り返し叫ぶシモンを見て子ども達は大喜び。こういう怒られるかどうかぎりぎりの世界が子どもは好きなのでしょうか。このうさぎとおおかみの緊張感ある組合せもドキドキして効果的なのかもしれませんね。だから怒る時もやっぱりぴしっと本気で。どこのうちでもある、悪がき対親の日常の戦いの風景だったりして。
何回か読んでいるうちにすぐ覚えて一緒に読めそうなリズミカルで明快な文章と、表情がとっても解り易く色も構図も大胆な絵。子ども達に受け入れられやすく、人気者になることは間違いないでしょう!「うんちっち」と合わせておはなし会にぴったり。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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