わたしをいじめたひとたちは
もうわたしを
わすれてしまったでしょうね――
新しい町へ引っ越し、新しい学校に通いはじめた小学校4年生の妹は、ふとしたことから、言葉がおかしいと笑われ、とびばこができないといじめられ、クラスの子たちから無視されるようになります。遠足でもひとりぼっち。
やがて妹は、学校へ行かなくなり、ご飯も食べず、口もきかず、部屋にとじこもるようになり……。
いじめに傷つき、心を閉ざし、孤独の世界にとじこもっていく小さな妹の背中。ページに書かれた言葉の意味が、心にしみこんでくるはしから、言葉で語ることができない、悲しさ、絶望、切実な願いなどが押し寄せてきます。
彼女を傷つけ、あざ笑い、ののしった友達は、中学生になり、高校生になっていく。でも、妹の時間は凍りつき、やがて止まってしまう。冒頭の文章は、妹が亡くなった後、残された手紙です。
弱い立場のものを踏みつけ、自分とはちがうものをとりのぞこうとする――これは、子どもの世界だけでなく、大人の世界でも同じことがしょっちゅう起きています。
この絵本には「かわいそう」「いじめる人はよくない」といううわっつらの感傷を寄せつけない厳しさがあります。それは、松谷みよ子さんのあとがきにあるとおりで、「おそろしいのはおおかたの人が自分でも知らないうちに、加害者になっている。またはなり得ることではなかろうか」という事実があるからではないでしょうか。この言葉は胸につき刺さり、離れません。
子どもから大人まで、ひとりひとりが自分のこととして考えたい大切なテーマです。ぜひたくさんの方々に手にとっていただきたい1冊です。
(光森優子 編集者・ライター)
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