「とざい、とうざい。」といつもの軽業、綱渡り中に、またもや綱から落ちてしまったそうべえ。しかし今回は危機一髪、山伏ふっかい、歯ぬき師しかい、医者ちくあんの3人に受け止められます。命を助けてもらったお礼にと、その夜はそうべえの家で飲めや歌えや大騒ぎ。しかし寝入ったころ、どこからともなく、暗闇になにかがあらわれ、暗闇の中にすいこまれて落ちていきます――。
穴のなかには数をかぞえるおけら。数が小さくなるにつれて、そうべえたちも幼い子どもに戻り、落ちたところはみみずの中。おけらは、みみずたちの結婚式の邪魔をしにくるもぐらのもぐりんをつかまえてほしい、そのために4人に土のなかにきてもらったのだ、というのですが・・・。
個人的なみどころは、そうべえたちが自由自在に土のなかをもぐって遊ぶところ。「わあーい。たんこぶでけた」「いもくってへをこいた。」「わあーい。べべちゃや、べったこやあー。」と、楽しそうな子どものそうべえたちは、作者の、いや、私たちの子ども心の分身のようです。土のなか、素っ裸で気持ちよさそう(笑)。
そうべえの妻のおさきさん、息子そうすけの名前が初登場。そして恒例の「あ――っ」と落ちる瞬間が縦見開きで描かれているのもみどころのひとつです。
それにしてもこの「そうべえ」シリーズ、型絵染(かたえぞめ)の迫力が素晴らしい。青(呉須)、緑、土色、墨色といった色や、構図のひとつひとつが、素朴で力強い日本本来の「美しさ」を体現しているように思えてなりません。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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「とざい、とうざい」一世一代の綱わたりに、またも綱から落ちてしまったかるわざしのそうべえ。間一髪、山伏のふっかい、歯ぬき師のしかい、医者のちくあんの三人に命を助けられ、のんで食べての大宴会に。それをみていたオケラが数をかぞえると、そうべえたちは子どもになって地底の世界へ吸い込まれてしまいます。そうべえたちは、ミミズの結婚式をじゃまするモグラを捕まえてほしいと頼まれますが…。
地獄、極楽、天の川につづき、今度の舞台は地の底! 奇想天外で豪快なストーリーと、子どもになったそうべえたちのしぐさや会話が楽しい本作。一方で、そうべえたちとモグラたち地底の生き物たちとの出会いは、わたしたちが「いのちあるものをたべている」ことを教えてくれます。そうべえの息子、二代目そうべえも最後に立派に登場しますよ!
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