夏休みに遊びに行った小学生の兄弟が、フサおばあちゃんの家で真っ黒に塗られた古い教科書を見つけ出したことから話は始まります。
おばあちゃんは孫達に、戦前は天皇が神様であったこと、戦争でたくさんの人が犠牲になったことを話します。そして昨日まで『正しい』と教えられて来たことを『ここは間違っています。墨をぬりましょう』という先生の言葉に、小学生だったおばあちゃんは何も信じられなくなってしまったこと。それから戦後に生まれた新しい平和憲法のこと。
この説明的な部分が子供にもわかりやすくきちんと説明されていて好感がもてました。私の母が(作者と一つしか年が違わないのですが)、戦時中の話を始めると、自分が体験したことを感情に任せて語るだけなので、どうしても子供にはその背景がわかりにくく『戦争は怖い、よくない』という気持ちしか伝わらないのです。今回このお話を読んだ小学3年生の娘は、当時の天皇が神格化されていたことや自分と同じ年頃の子供たちが受けた教育のことを知り少なからずショックだったようです。
お話の最後に子供のフサちゃんが二人の兄弟の前に現れ、自分は教科書に墨を塗らなかった、なぜなら墨を塗ったところで心は簡単に納得できないからだ、ということを語るのですが、このあたりはまだ理解できていないかもしれません。フサちゃんと同じ5年生になったときの感想を楽しみにしておきます。
何が本当に正しくて何が間違いなのか、これからは自分で考えなくてはいけないと心に誓うフサちゃんに、大人の私の方がいろいろと考えさせられるお話でした。 (アルゴドンさん 40代・ママ 女の子9歳、女の子3歳)
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