見渡す限り自分の家と畑以外何も見当たらない辺境の地。そこへ佇む老人。こんな環境は日本にはなかなかなく、家族もないこの孤独なジョンじいさんの気持ちというのは想像ができない・・・なんて途方に暮れてしまいます。
ところが、自分でつくった素っ気無いかかしに顔をつけてみるジョンじいさん。心なしか表情の変わっていく様子を見ているうちに、気がつくとジョンじいさんの心の変化にぐいぐい惹きつけられていく自分がいます。
かかしとおじいさん、若者とおじいさん。この広い広い舞台での小さな繊細なやりとりが一つ一つ凝り固まっていた老人の心をほぐしていき、同時に読む者の心にも深く響いてきます。
孤独や悲しみを知るもの同士、多くの会話は必要ないのかもしれません。かかしと仲良くなっていくじいさんを見て、誰かを思いやるという事が自分の心を豊かにするという事に改めて気がつかされ、若者とのやりとりでは心を開いていくことによって友情が生まれるのだと納得。
個人的には希望に満ちた、とても優しい本だと感じました。ただ、年齢や状況によって受け取り方はそれぞれ変わるのかもしれません。それも画家と作家の世界観が見事に一致した芸術的な絵本の懐深さ故なのかもしれませんね。丁寧に何度も何度も読み返してみて欲しい絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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