「ぼく父さんに母さん役までやってほしいと思わないよ」――母親不在の中、父と子が少しずつお互いを認め合いながら、新しい一歩を踏み出します。
長谷川集平さんと言えば、「はせがわくん きらいや」で1976年に鮮烈デビューを飾ったことで知られています。
この作品は、2009年の作品ですが、絵の感じがかなり異なります。
以前の強烈な印象がないのですが、今回の絵は青・赤・黄の三色の水彩絵具で描いたからのようです。
この作風が、今回の話の内容には実に合っている気がしました。
物語は、
「父さん、ぼく父さんに母さん役までやってほしいと思わないよ。
父さんは父さんをやっててくれたらいい。
・・…うまく言えないけどさ」
というぼくの言葉で始まります。
理由は分からないのですが、父子家庭になったという設定です。
大人のぼくの発言に戸惑う父。
父は、海外勤務が多く、母子で日本にいたようで、そんな昔話をするのですが、父に比べぼくの発言が的を得ており、正直、身につまされる話が展開します。
父と子、特に男の子との会話は、微妙に難しい側面があります。
そんな雰囲気を、長谷川さんが実に巧妙に描いており、多くのパパは惹き込まれてしまうのではないでしょうか?
最後に船を見に行くという父の提案に賛成するぼく。
ぼくが見たとてつもなく大きな船の幻影は、時代という船の暗示なのか?
父とぼくのこれからの船出の暗示なのか?
色んな捉え方があると思いますが、とても余韻に浸ることのできるエンディングだと思いました。
大人向け、しかも、パパ向けの絵本です。
是非、多くのパパに読んでいただいて、息子との対話を深めて欲しいものだと思います。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
|