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身近にみられる植物でも、その生態はよく知られていない。草や木の芽ばえ、夜さく花、たねのゆくえなど、植物の生き生きとした姿を約1900枚の写真で紹介します。
このタイトルは、埴さんの前書きのタイトルです。あすにむかって生きるために、いろいろな植物は天から与えられた体を、独自の智慧で駆使します。それを、1枚1枚の写真に、連続写真に、アングル、フォーカス・・・カメラだけじゃなく、心をも駆使して、植物への尊敬と憧憬を込めて、埴さんはシャッターを切っています。
小さい頃から、図鑑は好きでした。初めて手にしたのは、やはり植物図鑑です。精密画ではなかったわけですが、一堂に花が並んでいる様子が、おもしろかったのです。その図鑑を抱えて、祖母と植物園めぐりをすることも楽しみでした。知ってる花、知らない草木、どれもみな、誰かに名前をつけられて、確かに生きている、それが自分のパワーになりました。
写真技術が発達して、誰でも美しい写真は撮れるようになりましたが、「視点」に何があるかで、この「植物記」のような本ができるかできないかの差があるわけですね。
4月から3月までひとつきごとに添えられた文も素敵。
たとえば、8月
「夕方になって、すずしい風がふきはじめた。尾がとれたばかりのカエルの子が、エノコログサの茎にとびついた。なんどか落ちた。
とびついて、ぶらさがって、足をかけて、茎の上にあがったとき、大きな夕日がしずんだ。(後略)」
エノコログサのたおやかな茎と光る房が、カエルの子との競演で、表されています。
まだまだ語り尽くせない魅力にあふれた本なのです。 (あさやんさん 40代・その他の方 )
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