ネコ専門動物病院の、キャットドクター!?
異色の経歴を持つ著者が描くのは、タクシードライバーになったネコの物語。
黒くてピカピカのタクシー。
1ポンド硬貨の乗車賃。
ランチのフィッシュ・アンド・チップス。
そう、舞台はイギリス!
主人公のトムは、足の速いのが取り柄のネコ。
港の倉庫で生まれましたが、今ではタクシー運転手であるランスさんの飼いネコです。
ある朝、うっかり階段から落っこちて、ランスさんが足の骨を折ってしまいます。
とてもタクシーを運転することはできません。
そこで、トムはランスさんにこう提案します。
「ぼくにも運転できるタクシーを作ってください。小さなネコのタクシーを。そうすれば、ぼく、仕事をしますから」
ネコにタクシーができるものだろうかと疑いながらも、熱心なトムのために小さなタクシーをこしらえるランスさん。
ハンドルはついていますが、エンジンはありません。
駿足自慢のトムが、足を使って走るのです!
自転車にひかれてしまった子ネコを運んだり、自分の結婚式に遅刻しそうなネコを乗せたり、ときには大変な騒動に巻き込まれながらも、特技を活かしてタクシードライバーをこなすトム。
ところがそんなある日、トムはとんでもない事件の現場に居合わせてしまうのです――
ネコ専門の獣医さんによる、さすがのネコ愛にあふれた、愛らしくてあたたかな物語です。
黒くてピカピカの車体と、クラシックなデザインで有名なロンドンタクシー。
そんなロンドンタクシーが小さくなって、しかもネコが運転しているというのですから、かわいいに決まっています!
捕まえたネズミはテーブルに置いたらダメ?
タクシーに乗せてあげたら、お金をもらわなくちゃいけない?
もともと野良ネコだったトムは、自分とはちがう人間の価値観に戸惑ったり、不思議に思ったり……
ものごしやわらかで、仕事に対してもていねいでまじめ、それでいてときには情熱的!
そんなトムの魅力あふれるキャラクターが、いちばんのみどころ!
小さなネコのタクシーとトムの活躍を、もっともっと読んでいたくなる、ワクワクの一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
続きを読む