赤い表紙がパッと目に飛び込んでくるこのかわいい本の主人公は、スーちゃん。黄色いドアのちいさな家にパパとママと住んでいます。
まず最初のお話は、スーちゃんがお気に入りのお人形さんたちと庭でパーティをするところから始まります。土で作ったケーキをママにもあげようと持っていくと、ママはケーキを見るなりびっくり。なんと特別な日にだけ使う用のお皿が使われていたのです。その後は次々と、土だらけの階段やキッチン、花壇から抜かれたお花、庭に持ち出された大事な銀のケーキナイフを発見!これはちょっと大変な状況!?さて、スーちゃんのママはどんな風に対応したのでしょうか?
この本には、スーちゃんの何気ない日常が描かれたお話が9つ入っています。魅力は、何といってもスーちゃんの子どもらしいのびのびとした発想や行動と、その周りにいる大人たちの温かい対応と眼差しでしょう。いつもスーちゃんを優しく見守り、必要な時にさりげなく手を差し伸べ、最後にはとっても幸せな気分をスーちゃんに残してくれる大人たち。たとえばパパとのおるすばんの日、ママをびっくり大よろこびさせよう!という提案で、お手伝いをすごく楽しいものに変えてしまうパパ。ママの誕生日に、花壇のお花とお水で香水を作ろうとして失敗してしまったスーちゃんに素敵な提案をしてくれるおとなりのバートンさん。歯を抜くのがこわいスーちゃんと歯医者さんごっこをして楽しみに変えるママ…。
スーちゃんと同じぐらいの年の子へはぜひ読んで聞かせてあげることで親子の幸せな時間を、自分でお話が読めるようになった小学生には1人読みで読書の楽しみを、大人へはシンプルなお話の中にある深みと心地良さを、読む人の年齢によってそれぞれに味わえる喜びのある、何度でも楽しめる作品です。
小学校の図書室では、3年生の女の子が気に入って、何度も何度も借りていったのが印象的でした。ちょっと小さめサイズの赤い本は、1度読んだら、持っているだけで彼女を幸せな気分にさせてくれたのかもしれません。
作者は、「テディ・ロビンソン」シリーズが有名なジョーン・G・ロビンソンさん。「おはようスーちゃん」でたっぷりこの幸せ感を味わってしまったら、他の作品も読まずにはいられなくなってしまうほどの心地良さです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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