50年以上前のあの戦争はもうぼくたちに関係ない遠い過去のことだろうか?
どこからともなくカナの目の前にあらわれて、「ほらあな、しらないか」と消え入りそうな声でたずねた不思議な少年。やせおとろえてぼろぼろの衣服を身につけ、日本語もおぼつかない少年がさがすものは――。
「夏休みに、翡翠をさがしに」を読んで面白かったので借りたが、中国人強制労働の話だった。おぉぉ、そんな話だったとは。
まず舞台となる田舎村がめちゃリアルに思い浮かんだ。これは田舎を知っている人の作だ。たまに感傷だけで田舎を書く人がいて残念である。
そしてその自分の村で起こった強制労働の過去。
大人たちがこぞって口を閉ざし隠しているわけ。
シンプルな”事実”だけでなく、祖父世代、親世代、自分たち、それぞれの思いも描かれていて、祖父世代にも納得がいくし、親世代にも納得がいく。
語り部が途絶える前に、私たち自身が調べることも必要ではないだろうか。
爆弾を落とされたり日本はやられてばかりだったわけではない。児童書だけど、こんなひどいこともしていたんだよと、エグさだけを押し出さず冷静に語る貴重な物語。
どうして戦争はいけないのか。
やられるからいけないのではない。戦争教育といえば特攻隊や原爆で恐怖だけを植え付ける今の教育に疑問を感じる。日本も他国に対して戦争を仕掛けていたのだ。
仕掛けたことにも傷ついたのだ。人を傷つけたことに傷ついた。
この事実をどうやって伝えていくか、決してなかったことにはできない。
易しく書いてあるが、事実はそのまま込められている。
繊細な心がわかるようになる中高生が読んでもいいと思う。良い本だった。
大人が読むなら、もう少し突っ込んで読後掘り下げてもよいだろう。
人権作文や夏休みの読書感想文にも良さそうです。 (てぃんくてぃんくさん 40代・せんせい 女の子14歳)
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