戸田幸四郎の名作絵本シリーズ。太宰治の名作の世界が、見事に描かれています。
友のために命を懸けて走り続けるメロス。太宰の切れ味鋭い文体、力強い絵が物語の世界をより魅力的に彩ります。力強い油絵と手に汗にぎる展開は、読む者をぐいぐいと引き込んでいきます。
何度読んでもおもしろく、気持ちのいい名作。友情の美しさ、信頼の尊さが爽やかに伝わります。小さな子どもたちには難しい表現もありますが、絵の力が想像力を広げ、理解を助けてくれます。大人になっても胸に残る、これぞ名作です。
短縮版の『走れメロス』を読んだ後、やはり気になってしまった戸田幸四郎版を読んでみました。
こちらは、太宰治の原作が主で戸田さんがそれに絵を添えています。だから、話は原作のことになるのですが、これは子どもにとって良い絵本かもしれません。
文体は古いままですが、用語の説明が付されているので言葉の意味をおさえながら読み進むことができます。多少違和感のある文章も、名作を読んでいく上での味わいだと感じます。
戸田さんの絵は、文章を壊すことなくメロスや物語の背景を絵にして、あくまでわき役に徹しています。
声に出して読む本ではないかもしれませんが、メロスのイメージが独り歩きすることなく表現されていて好ましく思いました。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子12歳)
|