「ねえ、お話して!」と子どもにせがまれても、すらすらとお話が口から出てくる…何て事はなかなかできない。
でも昔話や民話などの多くが、「語り」伝えられてきたというその事実。これって凄い事だよなぁ、と思っていたら。
こんな興味深い本が出版されました。「読みたい 聞きたい」昔話を中川李枝子さんの文で書かれた、というのです。
どのような思いがあったのでしょう。(この本の後書きにその魅力的な言葉がたっぷりと語られています。)
昔話を取り上げるのはむしろ苦手だったと言う中川さん。でも、保育士時代に沢山見られたお話を聞く子ども達のきらきらした目や、幼い頃、レパートリーは少ないながらも、お父様が上機嫌に面白おかしく昔話を聞かせてもらった記憶に後押しをされた様ですね。
口に出して読んでみると、これが実に楽しいのです。誰もが知っている「桃太郎」を語っても、やっぱり中川さんらしく優しく愉快なお話に。(こんなに変わるものなのですね。)そこに同じくお父様の語りを聞いて育った山脇百合子さんの期待通りの挿絵が入ります。「語る」素晴らしさを熟知なさっているのだと、読みながら感動してしまうのです。
自分でお話を作って聞かせる、なんて離れ技は出来なくても、こんな本があると繰り返し読んであげたくなります。
子ども達が、絵本とまた違った反応を見せてくれるのも面白いですよ。繰り返し聞く事によって驚く程言い回しを覚えていたり、内容を理解しています。そんな彼らの想像力にも関心させられてしまうのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む