世界で一番有名な探偵がシャーロック・ホームズだとしたら、本書に登場する「怪盗紳士」こと、アルセーヌ・ルパンは、間違いなく世界一有名で、愛されている泥棒でしょう。
権力者やごうまんなお金持ちからは物を盗みますが、貧しい人には力を貸します。変装の名人で、ばつぐんの運動神経を持ち、その上、人が思いもつかない奇抜なトリックや心理戦をつかって、厳しい監視の目をあざむくのです。
本書には5篇の短編がおさめられています。どんなお話か、少しのぞいてみましょう。
ニューヨークへ向かう豪華客船に、怪盗ルパンが乗り込んでいるというニュースが広まった!
密室の中での疑惑がおそろしい「大ニュース・ルパンとらわる」。
セーヌ川の川中島にそびえる奇怪な古城で暮らす男爵に、刑務所にいるはずのルパンから
盗みを予告する手紙が届く。だいたんふてきな計画にあっと驚く「悪魔(サタン)男爵の盗難事件」。
厳重に見はられている刑務所から、前代未聞の方法で脱獄をやってのけるルパンの姿が
痛快な「ルパンの脱走」。
特急列車のコンパートメントに座る怪しげな男はルパンではないか? 同席した婦人に相談された
青年紳士は不安を抱えながらも、いつしか眠ってしまい……ハラハラするアクションと、
ゾッとする結末が待ち受ける「奇怪な乗客」。
伯爵家の家宝のダイヤモンドのネックレスが消えた奇妙な事件から、ルパンはなぜ怪盗に
なったのかという謎が明かされる「ぼくの少年時代」。
どの物語も、手に汗にぎる大冒険と、あざやかな犯行の手口、誰もの心をぐっとつかむルパンの活躍を楽しむことができます。
そんな魅力あふれる怪盗ルパンのシリーズは全部で20巻あり、本書のあともまだまだ続きます。男の子にも女の子にもオススメです。そして、あなたのお父さんやお母さんも、学校の図書館に並んだルパンの全集に胸をおどらせたことがあるはず。ルパンのどのお話が好きだった? と、親子で話をしても楽しいですね。
(光森優子 編集者・ライター)
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