美しいモノクロ写真で綴るふたごの子ぐまたちの冒険物語。冬眠から覚めた子ぐまたちが、かあさんの言いつけを守らずに、遊びに出かけて行き、道に迷ってしまいます。動物への優しい視線が満ちた動物写真の第一人者イーラの写真絵本。
熊の子も、人の子も同じ!?
これは、初の動物専門の写真家となった女性イーラが、写真を撮り、お話も自分で書いた唯一の絵本です。絵本の歴史をたどるときには、必ず紹介される児童書の古典のひとつであり、写真絵本というのは、日本ではまだもうひとつなじみが薄いかと思いますが、どうぞ先入観なく、お子さんと一緒に読んでみてください。
さて、お話は春まだあさい山の中、冬眠から目がさめたばかりの二ひきの子熊が、穴から顔を出している場面から始まります。この子熊たちは、この冬、穴の中で生まれたので、外の世界は何もかもはじめて。好奇心いっぱい、でも、ちょっとこわいな…そんなこの子たちの心を見透かしたように、はちみつ採りにいく母熊は、「とおくへ行くんじゃないよ。まいごになるからね」と言いおいて、出かけます。ところが…ご想像通り、子熊たちはいいつけを忘れて、ついには、迷子になってしまいます。
見ているうちに、これは熊の子の話じゃないんじゃない?うちの子とあんまり同じなんだもの…という気がしてきませんか。組んずほぐれつ、追いかけっこをしたり、珍しいものを求めてどんどんいくうちに、お母さんのことなどころっと忘れたり…。それに対して、この子たちを叱る母熊のその堂々たる威厳にみちた姿。厳しい自然の中で、子どもたちを守っていく責任の重大さが、その身体から想像されます。そして、その立派な毛皮からは、限りない暖かさも。
動物にも、人間にも共通する子どもの冒険心や親子の愛情が、とてもシンプルな形でギュッとつまっている絵本です。
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