いつのころか、磐梯山には「てながあしなが」という大きな猿が住み着いて、村人にいたずらをするようになった。 それを見かねた坊さまがてながあしながに説教したところ、本当は村人と一緒に遊びたかっただけだと言う。 坊さまはてながあしながを小猿に変身させ、村の六地蔵の隣に新たな地蔵として住まわすことにしてあげた。 月日は流れ、村は悪代官が仕切るようになり……。
見返し絵を描いている今は亡き田畑正くんにささげたお話。
進行性筋萎縮症という難病で29才でなくなった田畑正くんは田島さんの大学での教え子だったのです。
『絵筆にかけた青春』という田島さんがまとめた田畑くんの遺稿集に記された、田畑さんの不遇な略歴はこの『はじめてふったゆき』の化けものサルに込められているようにも思えました。
田島さんの作品には、弱者をモデルにしたり、弱者の絵をお話にしたり、田島さんの人間愛による作品が数多いのです。
会津地方に雪が降らなかった頃の昔話。
一匹の化けものザルが悪さをしていたのです。
しかし、お坊さんが訪ねたことには、本当は小さなサルになって人間たちと仲間になりたかったのです。
お坊さんはサルを小さくして、六地蔵の仲間にしてあげました。
化けものザルに恐れをなしていた、領主が村に戻ってきて村民たちの搾取を始めます。
そんな時、お坊さんはサルと六地蔵を天竺に送って頼みごとをします。
それが「ゆき」。
村人たちを守るための雪だったのです。
田島さんの大胆な画風と破天荒なお話。
だいだんぼうが「ふぐり」丸出しで登場したり、「まったでえこ」のような色っぽい大根が登場したり、民俗情緒たっぷりのお話ですが、田畑くんへの鎮魂になっているのだと感じました。
お坊さんは田島さんでしょうか。
共著の竹内さんは会津地方の伝承や昔話の研究家のようであり、とても重厚な絵本になっていると思います。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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