古典名作を絵画化した安野光雅の大人の繪本。
100年前のベストセラー鴎外訳『即興詩人』の舞台を踏破する。
100年前、森鴎外の雅文体で翻訳されたアンデルセンの「即興詩人」その言葉の美しさと波乱万丈の恋物語に魅せられた著者が、舞台イタリアを巡り描き下ろした画文集。
わたしが、はじめて森鴎外訳の『即興詩人』に出会ったのは、20代半ばのころでした。(略)心地よい文章の音が、ますます耳に残っていくのがわかりました。そして、はっと悟るところがありました。「文語体の美しさとはこれか」と、わたしはその秘密に触れたのです。(略)これは鴎外の『即興詩人』に触発されて、主人公アントニオの足跡をたどったものです。つまりそれは、アンデルセンの足跡でもあるのです。しかし、鴎外は一度もイタリアには行っていないのです。わたしは、この物語に描かれた現場に立ってみて、鴎外の翻訳の的確さになんども驚いたものです。――(まえがきより・安野光雅)
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