山のたぬきが「イソップを考えたよ。まあ、きいてくれたまえ。」目からウロコが落ちるようなユニークな寓話。
たぬきが「イソップものがたり」を読んで作ったという話が3つ語られます。
「きたかぜとたいよう」「おおかみがきた」「まちのねずみといなかのねずみ」「アリとキリギリス」ぐらいしかイソップの話は思いつかないので、たぬきの話がイソップのどの話なのかはわかりませんでしたが、独立したお話としても楽しめると思います。
「こぶたとうさぎのハイキング」。ハイキングに出かけたこぶたとうさぎ。道に迷ったので地図で確かめます。平地にいるのに山の上にいると言ったり、森の中にいると言ったり、それぞれに違った憶測をするのです。私は方向音痴なので地図があっても正確な場所がわからないことがあり、結構身につまされるところありでした。
でも、この2匹の憶測は妄想という域にまで達しているようで、おおかみに食べられておおかみのお腹の中にいるとい思うに至っては笑ってしまいました。
「こぶたとばくだんこぶた」。隣に越して来たおおかみが悪者なのかを確かめるために、ばくだんこぶたを作って試そうというものです。オチには思わず笑ってしまいますが、反面怖さもあって、ブラックユーモア的でした。
「かくれすぎたうさぎ」。この話はイソップというよりグリムの「おおかみと7ひきのこやぎ」に設定が似ていると思いました。出かけることになったかあさんうさきが、7ひきのうさぎに「だれがたずねてきても 家のなかへ いれてはいけませんよ」と言います。用心深いうさぎたちは、めんどりが来てもねずみが来ても開けませんでした。
読みながら、知り合いの子どもが留守番を頼まれて誰が来ても開けてはいけないと言われたので、お兄ちゃんが帰って来ても開けなかったという話を思い出しました。この話も、言いつけを守る大切さはあるものの、行き過ぎた怖さというものを感じます。
61ページの児童書です。佐々木マキの漫画的な挿絵がよく合っています。長い話で、1日1話ずつ読もうとしたのですが、息子が次が読みたいと言うので最後まで読みました。
1976年初版の話ですが、安全性を重視するばかりに、心が不自由になっている現代人の深層を風刺しているような面もあり、ドキッとさせられました。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子6歳)
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