あなたを失いたくないと、思うだれかがきっといる。
『あらしのよるに』木村裕一+『忘れてはイケナイ物語』黒田征太郎 「いのち」のことをかきつづける2人が、読者と挑んだ3DAYS LIVE BOOK
この絵本は、2002年9月11日の刊行をめざし、作家と画家が、8月5日から7日までの3日間でストーリーと絵を創りあげていくところを、観客に公開しながら作られました。
2002年9月11日の出版予定に合わせて、3日の短期間に読者参加型で書き上げた絵本だそうです。
9月11日は現代の夏の悪夢の日。8月6日の広島原爆、9日の長崎原爆、そして近い過去では12日に御巣鷹山に墜落した日航機ジャンボジェット機の事故と8月の祈念日を過ぎて迎えた9月に起きた信じられない最悪の日です。
前年の2001年9月11日。ニューヨークの国際貿易センタービルにテロによりジェット旅客機が突っ込みました。私は繰り返されるテレビ映像に頭が真っ白になってしまいました。
狐に襲われて全世界がパニックになったのです。
一年後の9月11日の出版にこだわった木村祐一さん黒田征太郎さんの思いと、とても強いメッセージを感じます。表紙の絵もニューヨークの参事を思い出させてしまう。
この絵本の内容は、いじめの話、仲間割れの話です。
若いアネハヅルの群れがキツネに襲われ、一羽の仲間が命を落とした。
キツネに襲われたのは何故だろう。
だれもが原因を求めます。
それがちょっとした親切心によるものだったとしても、仲間は理解よりも追及を求めます。
クルルは仲間たちの誤解に抗議もせず、群れと一緒にはばたくこともできません。
心に深い傷を負ってしまったから。
集団の怖さ。
友達のカララとともにはばたけたのは、またしてもキツネに襲われたから。
仲間って、時には自分を責め付ける暴力であり、時には希望でもある。
仲間ってとても大きな力を持っている。
カララのような心をもたなければいけない。
この本を、他人事のようにして読んではいけないと思いました。
自分もアネハヅルの一員なのです。
カララのような心を持たなければ、私もただの偏見頑固おやじ。
キツネの言い分もあるかもしれませんが、ここはキツネには悪者になってもらって、平和と仲間を大事にするアネハヅルになりましょう。
絵本は、ハッピーエンドですが、これは作者の願いです。
ニューヨークの衝撃とは直接関連づけることはないかと思うけど、人間社会ではこの絵本のような話は自分の回りにたくさんあるのですから。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子12歳)
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