りっぱなぶどうの木を持っているきつね。それは素敵に美味しくて、きつねは毎日それを食べていた。
するとたぬきが通りかかり、食べたそうにしているので、きつねはぶどうをひとふさあげることにした。
「ちょっともったいなかったかな」なんて思っていると、次の日、たぬきがお礼としてりんごを持ってきてくれた。きつねは食べながらとっても嬉しい気持ちになり、考えた。
「ぼくのぶどうは美味しいから、ほかのみんなも食べたいに違いない」
そこでみんなにぶどうをあげると、次の日には・・・。
「相手がほしいものをあげて、自分がほしいものをもらう」
シンプルだけど、すごくワクワクする発見をしたどうぶつたち。
森にはやがてたくさんの店が開き、遠くからもたくさんのどうぶつたちが店を見にやってきて、とってもにぎやかな「いちば」ができあがっていったのです。
「経済の基礎を学ぶ」という、ちょっとユニークなテーマを持ったこの絵本。
五味太郎さんによって描かれたこのお話には、むずかしいことは一つも出てきません。
でも、「とりかえっこ」をすることの嬉しさ、楽しさという基本的な感覚が充分に伝わってきます。
それは、相手に喜んでもらえることであり、とっても効率的なことでもあり。
だからどんどん広がって、にぎやかになって、必要な場所になって。なるほど、やがて大きな経済へと成長していくんですね。
「あれ買って!これ買って!」(ほしいものがこんなにも目の前にあるのに、どうして全部買ってくれないの!)
スーパーの中で泣いてわめいてる小さな子どもたちのこんな心の叫びにも、ちょっと答えを用意することができるかもしれませんよ、なんてね。
ちなみにこの絵本には、休みの日にしっかりとお店の品物の質を保つ努力を怠らないどうぶつたちの様子まで描かれています。まったく頼もしいばかりの1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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