明日はクリスマス。でも男の子の家は貧しくて、クリスマス・ツリーも食べるものもありません。お父さんは病気、お母さんは赤ちゃんのお世話で仕事ができないのです。男の子は裏山にあるもみの木を切り、町へ売りに出かけました。「もみの木、もみの木、クリスマス・ツリーはいかがですか」。でも、誰も買ってくれる人はいません。町外れまで歩いてみると、ぽつんとむこうに家が一軒見えました。思いきって戸をたたき「もみの木はいかがですか」と男の子がたずねると、出てきた大きな男の人は「ぼうや、うちは植木屋なんだよ。もみの木ならもうたくさんあるのさ…」。そこは植木屋アイデルさんの家だったのです。それを聞いた男の子は、ワッと泣き出してしまいました…。
男の子の清らかな心が、小さなもみの木を、世界一の美しいもみの木に変えるクリスマスの夢物語。もみの木がどんどん大きく伸びてゆく場面は、ページをめくるたびに驚きの連続となるでしょう。また同様に、ここの描写は簡潔でテンポがよく、物語の大きな山場でもあります。 キリスト教的なクリスマスの絵本ですが、心の交流という視点では普遍的とも言えます。前半、寒い風の中、はだしのままの男の子の姿に胸が痛みますが、その分、男の子とアイデルさん一家の出会いに心が温まります。やさしいタッチの色鉛筆の色彩が、さらに素朴で温かい印象を加味しています。 ――(ブラウンあすか ;絵本ナビ オフィシャルライター)
貧しい男の子が売ろうとして売れなかったもみの木。親切な植木屋さん一家とのふれあいに感謝した男の子が、そのもみの木を植えると、男の子の純粋な気持ちがもみの木に魔法をかけたのか…、不思議なことが起こりました。
もみの木がどんどん大きくなるところは、本を抱えているわたしたちまでもが魔法にかかったような錯覚を覚えます。空からきらきら降りてきたお星様がもみの木を飾るなんて、どんな光景でしょう。子供もその場面を想像するのが好きなようです。物に囲まれたクリスマスより、温かい人に囲まれたクリスマスの方がずっと素晴らしい。そんなクリスマスの意味が再確認できる作品です。 (ムースさん 30代・ママ 男の子8歳、女の子3歳)
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