ピーター・ラビットシリーズの一冊。作者ビアトリクス・ポターの一番のお気に入りだったという作品です。他の作品同様、動物が印象的に擬人化され、本作品では仕立て屋との関係を盛り立てています。ねずみが走り回る部屋での仕立て屋の貧しい暮らしぶりは、英国ビクトリア朝時代の職人の生き様そのものでしょう。家具や食器、洋服のスタイルからは、この時代らしい品格がうかがえます。
猫のシンプキンの気分屋ぶりが仕立て屋を窮地に追い込みますが、これを救うのがねずみたち。彼らが歌いながら仕事に励む場面は、にぎやかさが目に浮かんでくるような光景です。最後に改心したシンプキンの表情には猫らしさがたっぷり。猫とねずみの関係が見逃せない伏線になっています。
対象年齢は、小学生中学年以上。
――(ブラウンあすか)
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