この本は、読む側の関心と読んでもらう側の気持ちがつながらないと難しい本かも知れません。
扱われている写真はモノクローム。イメージ写真ではなく、芸術写真。デジタル画像ではなく、フィルムプリント。
写真の内容ということより、写真そのものに様々な技術が駆使されています。屋内でストロボを使わないライティング、スローシャッター、アウトフォーカス…。カメラアングルの撮り方、構図、写景の切り取り方…。写真好きな人には気になる写真です。なるほど、著者紹介を見ると、細江英公氏は写真家でした。この手の写真に慣れていない人には、良く分からない世界かもしれません。
その芸術写真でストーリーを作っているのですからスゴイと思います。ただ、写真の世界としては昭和30年代から40年代の撮り方。古さを感じるかも知れない。
写真による絵本というのは初めてですが、絵とは違う面白みがありました。
ストーリー通りの写真を写すということは難しいでしょうし、ストーリーに効果的な画像にするというのは、見る側の問題もあるでしょう。そして、とった写真は修整できないという緊張感のもとに成り立っている。
写真に合わせてストーリーを変えていくことも必要なのだとも思いました。
ただ、ブラックタイガーは話の重要な登場人物だけに、あの写真だけはマイナスです。
写真や映像の技法では、何気ない風景や物に効果的に意味を持たせることがあるのですが、絵本としては子どもにわかりづらいかも。
と、息子から一言ありました。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子12歳)
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