チョコレートの町では、誰でも顔の形を自由に変えることができます。小学校では、動物の顔が流行っていました。クニオのクラスでは、ワニの顔のボン太がいばりほうだい。クニオはボン太をこらしめようと、肉食恐竜の顔になってやっつけます。けれど、いつしかクニオも、以前のボン太のようにいばり始めたのです。ある日のこと。星の形に変えたクラスメートが、空の彼方へと飛んでいってしまいました…
題名を見た時、甘くて楽しいお話のような印象を受けましたが、
内容は全然違って、けっこうビターなお味でした。
何度か読み返してみても、その都度、感じるものがあって好きになりました。
ちょっとSFのような印象を受ける、街の設定。
住んでいる人は、全員、チョコレートでできているから、好きな風に自分の顔を変えられるという。いろんなチョコレートのお菓子が歩いていて、見ているだけでも面白い。知っているお菓子、知らないお菓子、あれこれ探して幸せな気分になります。
しかし、お話自体は、内容が深いと感じます。
見た目を簡単に変えられるからといって、ワニになって威張ってみたり、威張っている人を懲らしめる目的でティラノサウルスになっても、前よりももっとひどい暴君になってしまったり、なかなかままならない人生を歩んでおられます。
見た目を変えると、心の中もそれに応じた性質をもってしまいます。その事に最後は気が付いて、ハッピーエンドで終わるのですが、読後に、なんとなくいろんなことが気になってあれこれ想像してしまうお話でした。
このお話には書かれていないけど、おとなのチョコレートの人たちのお話も読んでみたいと思いました。大人の世界は最初のほうにちょっとだけ紹介されていたのですが、人と違う面白い顔になって注意を引こうとする様子が描かれています。
これはこれでいろんな問題が起きて、話が面白くなりそうです。
形が簡単に変わるものだったら、何でもよかったのかもしれませんが、チョコレートという魅力的な材料を持ってきたので、年齢を問わず楽しめる作品になっているのだと思いました。
このお話の世界の住人に、もし自分がなったとしたら…いろんな空想が広がり、本を閉じても楽しみがたくさん続きます。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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