日常生活に少々たいくつしていた家ねこのキットは,ある日出会った魔法のたこにたのんで,広い世界に案内してもらいます.つぎつぎとこわいめにあうのですが,さいごは魔女につかまってしまいます.
ヘレン・クーパーは、1997年に「いやだ あさまであそぶんだぃ」で、1999年に「かぼちゃスープでケイト・グリーナウェイ賞受章しています。
作者紹介で、「いやだ あさまであそぶんだぃ」がデビュー作と書かれていたのを読んだ記憶があるのですが、この作品は、1987年とかなり以前の作品ということになります。
ヘレン・クーパーは、1963年生まれで大人になるまで、カンブリア州に住み、10年ほど音楽教師を勤めたのち、絵本作家に転身という経歴なので、この作品が生まれた背景が分かりませんでした。
因みに、カンブリア州は、ロンドンから役300マイルの所に位置し、英国随一の自然美を誇る湖水地方で、詩人ワーズワースがこよなく愛し、ポターが描くピーター・ラビットの住む地として有名です。
幼少期の経験が、クーパーの作品に醸し出されているのではないかと思っています。
物語は、人間の世界に住む猫のキットが、
「つまらないなあ、まいにち、おんなじことばっかりだ。
いえをとびだして、ひろい世界を見てみたいよ」
と溜息混じりに話すところから始まります。
そこに、黄色いたこが空から落ちてくるのですが、木に引っかかってしまいます。
キットが見に行くと、何とそれは、言葉を話す魔法のたこ。
助けてくれたら、何処へでも連れて行くよと言われ、キットは外の世界を見に行くのです。
野良猫の王様になろうとしたり、山猫になろうとしたり、船に乗ったり、魔女のお供になったりと、冒険が続くのですが、隣の芝生は青かったという物語です。
それぞれのエピソードは面白いし、絵も独特の暖色系のクーパーらしさが感じられるもの。
ただ、ジャンルとしては童話に近く、小学校低学年の子供が自ら読むという類の絵本だと思います。
完成度は高いのですが、後に発刊される絵本とは一線を画すものと考えた方が良いでしょう。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
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