まいごになったうさぎのぼうや。そこに忍びよるはらぺこきつね・・・。
こんなドキドキするシチューエーションで始まる物語なのですが、一つ面白いのはここが「きつねとうさぎがであうと
おやすみなさいをいう約束」の場所だってこと。一体どんなやりとりが始まるのでしょう?
うさぎに近づいた腹ペコきつねは、勿論口をガバッとあけます。「あ!食べられる」と思うと、うさぎのぼうやは
「ちょっと、まって!」とさけびます。「しってるよね、ここはきつねとうさぎがおやすみなさいをいう ばしょだってことを?」このうさぎのぼうや、小さいクセになかなかどうして堂々たる態度なのです。慌てて「おやすみなさい!」を言うきつねですが・・・。
ここからのやりとりは読んでからのお楽しみとして。
結構緊迫したやりとりのはずなのに、うさぎぼうやがひょうひょうとしているからか、きつねが意外に素直だったりするからか、ほのぼのとした雰囲気をかもし出しちゃっている二人が見ていて何だか可笑しいのです。特にきつねがうさぎのぼうやを寝かしつけている姿なんて・・・「そんな事している場合?」なんて突っ込みたくなったりして。
うさぎぼうやの家族の関係も素敵。勇敢なぼうやの意思を尊重するパパうさぎ、ぼうやを包み込むママうさぎ。最後の場面も含めて、小さな子がうさぎぼうやを自分と置き換えて読んで行くととっても楽しめそうな内容ですね。
更に、くるくると変わる豊かな表情、毛並みの触感や体温まで伝わってきそうな迫力あるけど温かくてとても可愛らしい絵が物語を更に盛り上げてくれます。色合いや構成も日本の絵本とは一味違って新鮮に映りますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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