小学生が書いた、史上初の本格派小説単行本!! 昨春、「ヘチマと僕と、そしてハヤ」(「12歳の文学賞~第二集~」収録)で 「第二回12歳の文学賞」大賞を受賞した三船恭太郎。 破天荒な同級生との友情と別れを見事に描いたエンターテイメント小説は、 審査員に「三島由紀夫レベルの早熟さ」と言わしめた驚異の完成度。 受賞後も着々と次回作を書き続け、総300頁にも及ぶ大作がついに完成しました!
この本は、児童書というより児童作家の小説。
児童というより作家の域に達してしまった少年の文学作品である。
「第二回12歳の文学賞」の大賞作品として読んだときは、その自由奔放さと文章の大きさに驚いたものだが、続編として書かれた小説を読むと、はるかにそれを飛び越えてしまって、限りない可能性を感じさせながら大進化していた。
ただただスゴイと思うばかりである。
前述文学賞の大賞作「ヘチマと僕と、そしてハヤ」を書いたのが10歳。私は、その時点で文章のタッチのすごさと、これだけ長い小説をまとめ上げる力に感服したものである。
続編として12歳にして書き上げた「それからの僕らの空」はとてつもない長編小説である。
その中で、前作の登場人物でもある、僕と親友のハヤ、ガールフレンドの涼子ちゃんは、その後の自分たちの心の中、生活、考え方と様々なディテールが見事に描かれている。
転校生としてのハヤの家庭事情。小学校生活の中での様々な出来事と純粋な気持のぶつかり合い。成長していくクラス仲間と自分自身。
卒業までのエピソードがユーモアでがっちりとまとめ上げているので、爽快さを強くしている。
そして、それぞれの登場人物がのびのびとしていて屈折していないのは、作家がまだ成長期であるからだと納得させられる。これ以上登場人物が感情のひだに深みをもってしまったら、もう児童文芸ではない。読み手としての児童はついてこられないだろう。
といいながら、恭太郎君は11歳時の作品「とびら」でとんでもないことをしてくれた。
怜子おばさんに乗り移って、同窓会に参加してしまうのである。
話の展開、12歳のくせに(ゴメンナサイ)30年前を経験しているかのような大人の描き方。45歳の同窓会にいかにも行ったことがあるかのように書き上げている部分。自分でも「そうだった、そうだよね」と納得できる。タイトルの「とびら」の由来を文中にさりげなく描いているきめの細かさ。雪を桜にかけて描写するところなどはにくいばかりの叙情感。熟成感というか老練さすら感じさせる。
すでに、私は子どもの文章などとは思わず、この作品に呑みこまれ、感情移入して全肯定。時折、思わず涙腺を緩ませてしまいました。
大の大人をここまで惹きつけるなんて凄すぎるぞ。
こんな子がそばにいたら恐いぞ。
「12歳の文学」を読んで、同世代の文章に何かを感じた息子。
この作品を読んで何というだろうか。期待しながら、本を渡してみた。
この本の評価には、☆を10個でも少ないと思っています。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子12歳)
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