プリュームさんの仕事は鳥を観察すること、奥さんのマドレーヌさんは鳥のさえずりが大好き。そして、そんな二人のところに毎週遊びに来るのが孫のチェリーちゃん。三人は、家の前に立つ大きなサクランボの木にやってくるたくさんの鳥達と、思い思いに楽しい時間を過ごすのです。特に奥さんの事を‘“かわいいことりさん” と呼ぶプリュームさんの幸せそうな事といったら!
ところがそんな三人に思いもよらない出来事が起こるのです。マドレーヌさんが病気で亡くなってしまうのです。
悲しみに沈んでしまったプリュームさんですが、ある時、マドレーヌさんが最後に言っていた言葉を思い出します。
「しんぱいしないで。わたし、いつか、とりになって もどってくるから。」
プリュームさんはやがて、窓辺にやってきた小鳥に誘われるように外へ出て・・・。
この絵本は、誰の身にも起こり得る「身近な人の死」というテーマをあつかっています。作者がそれぞれの登場人物を優しく丁寧に描き、その悲しみを理解しながらも、明るく美しい色彩で淡々と語っていきます。だからでしょうか、読み終わった後に浮かび上がってくるのは、三人が鳥を通して過ごした幸せな時間の確かな存在なのです。難しいことは何も書いてありません、子どもから大人まで楽しめます。そして、読んだ人の心の中に何かを残してくれるに違いありません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む