お宮参り、七五三、成人式、卒業式や結婚式・・・人生で着物を着る機会は数える程になってしまった現代。
子どもたちは、着物についてどのくらい知っているでしょうか。
私たち大人でさえ、その奥深さについて、きっとまだまだ知らないことばかり・・・。
作者は『「和」の行事えほん』『テーブルマナーの絵本』で日本の文化のすばらしさを伝えてくれる高野紀子さん。
おなじみのかわいい動物達がナビゲーターとなって、着物の歴史、種類や文様、季節に合わせた着こなしや楽しみ方を紹介してくれます。
着物に描かれる「のし」「鶴」「おしどり」「宝尽くし」などの文様に込められた意味。
春ならつつじに桜、若草。秋なら女郎花(おみなえし)や紅葉、りんどう。
季節の植物をモチーフにした「かさね色目」の絶妙な美しさ。
一枚の反物から生地を余すところなく使う、着物づくりの技術。
TPOに合わせた着物選びには、相手や場を敬う日本人の慎み深い姿勢を感じます。
昔の人々の知恵、美意識、色彩感覚。日々を大切に暮らす生き方と四季を通して着ることを楽しむ遊び心。
高野さんが描く繊細で優しい着物は、日本人のルーツと長く培ってきた奥深く繊細な感性を今に伝えてくれます。
ゆっくりとページをめくりながら、懐かしく優しい気持ちに包まれるのです。
この本を読んだら「あぁ、着物が着たいなぁ」と憧れてしまうでしょう、きっと大人も子どもも。
街で艶やかな着物姿の女性や花嫁さんを見かけると、つい目で追ってしまう。
懐かしさと親しみを感じる瞬間。やっぱり着物ってステキ、日本っていいなとしみじみ思う瞬間。
着物を着る機会のない現代でも、着物の魅力を知るだけで、その文化は子どもたちの中にちゃんと息づいていくような気がします。
忙しい毎日の中で、ふっと優しく日本人の心を思い出させてくれる『着物のえほん』。
親から子へ、大切に読み伝えていきたい一冊です。
(竹原雅子 まなびナビ編集部)
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