おばあさんが、おつきみだんごを作っています。「きゅっきゅっ、ころころ」「おつきさまがよろこんでくれますように。みんながおおぜいたべにきてくれますように」
すすきと花と秋のたべものと一緒に、おだんごをおそなえしたおばあさんは、おつきみどろぼうに出かけます。「さあて、みんなのおだんごはどんなかな」
たぬきさんや、ねずみさんや、くまさんや・・・動物たちの家の軒先で、いろんな形のおだんごをこっそりつまんだおばあさん。けれど、ある家の縁側には、すすきだけ。「あら? おだんごはまあだ?」
家の中にいたのはおおかみで「おいらのおだんごなんか、だれもたべにこないよ」と言います。「つくってみましょうよ」と提案するおばあさん、一緒に作りはじめます。すると・・・?
そもそも「おつきみどろぼう」って何でしょう? このお話は、「おつきみどろぼう」の風習をもとに創作したそうなんです。
「おつきみどろぼう」は日本の年中行事で、子どもたちはおつきみの日に限って、よそのうちのおつきみだんごをどろぼうしてもよい、とされていたんですって。どろぼうされた家にはよいことがあると言われるそうですよ(日本版ハロウィンとも言われるそう)。知らなかった!
カバーの折り返しには「おつきみ」の風習についてや、おだんごの作り方も書かれています。物語だけでもワクワクする時間を満喫できますが、年中行事としての事柄を知ると「二度おいしい」気分。
絵本の中、やさしそうでおしゃれなおばあさんが歩く夜の風景は、濃紺や薄紫の闇夜に、黄金色の明かりがじーんとくるほどあざやかで、胸にしみこみます。日本の夜が香るような絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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「おつきみ」の夜に読み聞かせたい、心温まる絵本です。
カバーの軸に、おつきみの《なぜ?なに?》や簡単なおだんごの作り方など、役立ち情報コーナーがあります。
《おつきみ どろぼうって なあに?》
日本の伝統行事で、子どもたちは、お月見の日に限って、よそのおつきみだんごをどろぼうしてもよいとされていました。
子どもたちは月からの使者と考えられていたからです。
♪こっそり こっそり おつきみどろぼう おつきみ こっそり♪
たぬきのお月見だんごは大きく、ねずみのは小さく、くまのは積み木みたい。
ところが、おおかみはお月見だんごを作りませんでした。
「おだんごなんかいらないよ。おいらのところには、だれもおだんごを食べにこないよ」
というおおかみに、おばあさんがお月見だんごの作り方を教えてあげます。
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