かさぶた、できたことがありますね。「ひざこぞうをすりむいたときに、できた」「ナイフで切って、できた」などなど。かさぶたは、血でできた傷のふたなんだよ。まるで、しぜんのバンソウコウみたい。ほら、かさぶたのしたでは、新しい皮膚がどんどん作られています。こどもに身近なかさぶたをめぐってユーモラスに展開しながら、身体の不思議をときあかしていく科学絵本です。
ある会話の中で、柳生弦一郎さんがおっしゃったひと言、「かさぶたって、バンソウコウなんだよね」──が、この絵本が生まれるきっかけになりました。なるほど、そういえばたしかに、しぜんのバンソウコウですね。子ども時代には、みんなひとつやふたつは必ず身にもっていて、しだいに堅く、色もこくなり、かゆくてはがしたくて、それでも痛くてはがせなくて、いつのまにかみように親近感さえもわいてくるかさぶた。さっそく、柳生さんをおさそいして、幼稚園をたずねて、現在の子どもたちからかさぶたの取材、聞き取り、そしてりっぱなかさぶたの撮影までさせていただきました。「ぼく、かさぶたを食べたことあるよ。まずかったあ」という本文中の言葉は、この取材の中で聞いてきたものです。年長児クラスの全員、ひとりのこらずかさぶたをもっていましたよ。