春に生まれたヤマメのピンクにとって、初めて迎える冬。
凍えるように冷たい川、それは動物も魚もみんながおなかをすかせる厳しい季節だった。
やっと見つけたごちそうも、大きなヤマメに取られます。
その大きなヤマメを食べるのは、もっと大きなイワナのスノーじいさん!
スノーじいさんは、すれ違いざまピンクに言うのです。
「もうすぐ食べるものがなにもなくなるぞ。
つらいぞ、ピンク、待つしかないんじゃ、春までな。」
つらい冬が続きます。ある日、ふらっと泳ぎだしたピンクはイタチに襲われます。
その時イタチに躍りかかっていったのはスノーじいさんで…。
「ヤマメのピンク」シリーズ第2作目です。
夏の川を描いた前作とはガラッと雰囲気が変わり、今回の舞台は暗くて寒い冬の世界。
寒さに凍え、食べ物を奪い合う魚たちの中で強烈な印象を残すのが、スノーじいさんの存在感です。食うか食われるか、死ぬか生きるかの状況の中で、スノーじいさんが気にかけるのは小さなピンク。冬を熟知しているスノーじいさんは、そのつらさを伝えようとしたのでしょうか。それとも。
やがて迎える光にあふれる春。少し大きくなったヤマメの姿を見ながら感動の心に包まれていきます。
色がなくなる冬の川の中で起きる出来事を、鮮烈に、緊張感たっぷりの絵で描き出したこの作品は、ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞しています。雪の場面へと移り変わるページ、イタチが水に飛び込んでくる場面、まぶしい春の川を泳ぐ場面…読んだ後もずっと心に残るほど美しい絵の数々を堪能することができます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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