男の子はみんなモヒカン、女の子もしっちゃかめっちゃかに結わえた髪で、だれもが同じ形の家に住んでる、ヘンテコな町。
そこに住むウエズレーには、友だちがいない。
だって、みんな同じかっこうをしているのに、ウエズレーだけはそうしない。
ピザもコーラもサッカーも、みんなは大好きなのに、ウエズレーは大嫌い。
でも大丈夫、ウエズレーには得意なこともある。
いじめっ子から逃げるのと、それにちょっとした発明。
そんなウエズレーが、その年の夏休みに自由研究の宿題として作ろうと思い立ったのは――
自分だけの、文明!?
ここはウエズレーの、ウエズレーによる、ウエズレーのための国、「ウエズランディア」!
その新たな文明の歴史は、風によって運ばれた、ある不思議な植物の種からはじまる――
秘密基地やロビンソン・クルーソー。
そんな言葉に胸躍る、すべての人に届けたい作品です!
「自分だけの文明を作る」という壮大なテーマ。
そして、新たな文明の歴史をつむぐ、ウエズレーの発明と工夫の数々。
舞台は自宅の庭だけなのに、無人島での生死を賭けた大冒険にもまったく劣らないワクワクが、この絵本には詰まっています。
誰も持っていない、軽くて柔らかな服。
自分で考えた新しい遊び。
言葉や時間の単位、歴史まで。
ウエズランディアでは、すべてのものをウエズレーが作るのです。
「文明を作る」という奇抜なテーマについて、ただ秘密基地を作る、というだけのことにとどまらず、農耕からはじまり独自の文化を生み出すに至るまでを描いている点がみどころ。
その描写のていねいさが説得力を生み出していて、「なんだか自分でも工夫次第では実現できるんじゃないか?」なんて思わせてくれる楽しさがあります。
さて、ウエズレーは、自分だけの王国で存分に夏を満喫します。
暑い夜には、夜空に新しい星座を描きながらハンモックで眠り、自動で果実を絞る装置で、一日ジュースを飲み放題。
「ウエズランディア」、そこは、究極の自由だけが支配する国――
(堀井拓馬 小説家)
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