ワルターはびんぼうだけれど、リンゴの木を一本だけ持っていました。でも、この木には、まだ一つも実がなったことがなかったのです。隣の庭をうらやみながら、ワルターはベッドの中で祈ります。
「ひとつでいいから、うちのきにも リンゴが なりますように。」
……すると、その願いは叶ったのです!
うんと心を込めましたからね。ある夜、素敵な白い花が一つ咲いたのです。それはそれは大事に丁寧に花の手入れを続けると、やがて花は実になり、ワルターは喜びのあまり飛び回ります。なんて素晴らしい毎日なのでしょう。
ところが。
ワルターが刈り入れ時になっても実を取らないでいると、そのリンゴはどんどん大きくなっていき、やがてとてつもない大きさになり……!?
リンゴの持ち主であるワルターの、たった一つの小さな願いがとんでもない事態に発展し、思いもよらない展開を繰り返していきます。喜び悲しむワルターのまわりの人々も振り回されて大騒ぎ。なんでこんな事になっているのでしょう…この絵本を読んでいる人だって巻き込まれていきます。そして全てが解決し、ワルターが思ったこととは?
ヤーノシュの描く、なんだかとっても不思議な世界。少し不気味な場面が出てきたと思えば、笑っちゃう展開でもあり。一回読んだだけでは全てを掴みきれないお話かもしれません。大人になれば、また違う読み方ができるかもしれません。でも強く伝わってくるのは、ワルターの純粋な感情です。とびまわったり、涙を流したり、そんなワルターの様子はきっと子どもたちの心にも深く残っていくのでしょうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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