コッコさんがお昼寝から目をさますと……だーれもいない、だーれもいない。隣のお部屋にも、台所にも、お庭に出ても、だーれもいない。立ちつくすコッコさん。みんなどこへいったんでしょう。
「だーれも いないの コッコさん」
風や雲がそおっとコッコさんにきいてきます。ますます寂しくなったコッコさんは、ただだまって立っているだけ。すると。
「コッコさーん、おきてたのー。ごめんごめん」
お母さんの声に、思いっきり泣き出すコッコさん。もう安心のコッコさん。よかったね。
ふとした日常の出来事の中でも、子どもの心は大きくゆらめくもの。いるはずのお母さんがいない、それだけで家の中もお庭もがらんと広くなって、全然違う景色に見えてきて。コッコさんの中の小さな不安もどんどんふくらんでいくのです。そんな繊細な心の動きを、美しい水彩画で瑞々しく描きだしたこの絵本。その表情や手足の動き一つ一つ、どれをとっても愛おしくてたまらなくなります。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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