「まいった、まいった」
海の底で涙を流す、ノコギリザメのオジイサン。聞けば、ノコギリがボロボロなのだと言うのです。すると、うみのオバケが現れます。
「わしに まかせておけ」
おばけはノコギリをポイっと取ってしまうと、新しいノコギリの代わりにタコをつけます。だけど、タコなんてすぐに取れてしまいます。さらにイソギンチャクやウニ、サンゴ、ながぐつまで。おばけは次々につけては、満足そうに笑っています。オジイサンの涙は静かに流れていきます。このやりとり、いつまで続くのでしょう。
「大切なノコギリがボロボロになった」から流れていたオジイサンの涙は、いつしかさみしい涙に変わっていきます。でもその涙が運んできたものは……?
笑いと悲しみが同時にやってきて、でも読み終われば「これで、いいんだ」と満足できる長新太さんの傑作絵本、待望の復刊です。ハハハと笑いとばしてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
大切なノコギリがぼろぼろになってしまい、涙するノコギリザメのオジイサン。そこへふと、うみのオバケが現れてノコギリをなおしてくれることに。「わしにまかせておけ」うみのオバケは自信満々にそう言って、ノコギリザメのたいせつなノコギリをつかむと……?
長新太さんの作品は、毎回「どんな不思議な世界が繰り広げられるんだろう?」とワクワクしながらページをめくります。「なみだはしずかにながれていったよ」の言い回しが、どことなく静かなせつなさを感じます。それと反するような突拍子もない展開が続くと、やっぱりさすが長新太さん!と思いました。ラストはきちんとすっきりと終わりますが、読み終わったあとに不思議な余韻が残りました。 (ouchijikanさん 40代・ママ 女の子9歳)
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