クリスマス前夜の神秘に満ちたひとときが描かれた作品。眠りにつけない子どもたちが、クリスマスのときめきや興奮を胸に秘めながら、ささやかな体験をします。広い居間でぱちぱちと火のはぜる音を聞いたり、色とりどりの飾りで輝くクリスマスツリーに見とれたり、しんしんと降る雪の中に響く歌声に耳を澄ませたり……。まるで時間が止まってしまったかのようなできごとは、特別な夜であるからこそ感じられる「不思議さ」でもあります。
イラストは鮮やかなオレンジを背景にした上品な黒のペン画。文章表現や空間構成に派手さはありませんが、雪の静けさ、部屋の暖かさ、子どもたちの気持ちなど、各場面の描写は十分五感に訴えます。言い換えれば、それほど巧みな描写力を備えた作品であるといえるのでしょう。
――(ブラウンあすか)
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