ここはタイの小さな村。風通しのいい高床式の家でお母さんが男の子を寝かしつけています。そこに飛んできたのは小さな蚊。「ウィーン、ウィーン」と音を立てる蚊に向かってお母さんは、「しーっ! 赤ちゃんがすぐそばで寝ているでしょう?」。次にやってきたのは長いしっぽのやもりです。「トッケー、トッケー」と大きな声で鳴くやもりに向かってお母さんは、「しーっ! 赤ちゃんがすぐそばで寝ているでしょう?」。次にやってきたのは黒ねこです。
作者はタイ人。親子関係があたたかく描かれた作品は、自らの体験から生まれたものでしょう。タイの豊かな自然を背景にたくさんの生き物・動物が登場します。お母さんは子どものために、静かなお昼寝環境を作ろうと一生懸命。家の周りで音を立てる動物たちに静かにしてと話す姿は、万国共通の母親の姿です。鳴き声も、興味深いところですね。 何といっても描かれているタイの自然、風景が魅力的。敷物、置物、服装などからも、村の生活をゆったりと営む息づかいが伝わります。冒頭で作者が幼少期を振り返る一言がすてき。父親に毎晩、お話をしてもらったと言うのです。お昼寝前に読みたい一冊は、1997年コルデコット賞オナー作品です。 ――(ブラウンあすか)
赤ちゃんを寝かせつけたお母さんが、家のまわりにいる動物たちに「しーっ! しずかにしてね。」とくりかえます。タイの農村の風景をそのまま描いた絵本。
タイの農村を背景に、お母さんが子供を寝かしつける優しさを描いた絵本。抑えた色合いの切り絵が、素朴でゆったりとした雰囲気をかもし出し、まさにお昼寝(あるいは就寝)前にぴったりの一冊と言えます。こういうゆっくりと流れる時間が感じられる絵本っていいですね。このイラストと語りには、村の風や気温、音、匂い……など五感を刺激するいろんな要素が集約されていて、ほっこり自然に浸りたい気持ちにさせられます。娘もそう感じてくれているのかな? 「読んで〜」とリクエストするよりは、一人で静かにページをめくる絵本になっています。
面白いところは、タイと日本の動物の鳴き声の違い。いろんな鳴き声や音を立てながら動物・虫たちがページごとに登場し、興味深い音を披露してくれます。これが耳に心地よいのです! あと、ページごとに登場する動物たちが最後に再登場……ということで、動物探しのかくれんぼ絵本にもなります。
わたしまで眠くなってきてしまうので、それだけリラックスしてしまうということですね。 (ムースさん 40代・ママ 男の子10歳、女の子5歳)
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