ゆうきは大好きなおばあちゃんの誕生日に向けて手紙を書きます。
「プレゼントにいちばんほしいものはなんですか。」
ゆうきの笑顔以外は何もいらないと言ったおばあちゃんは、ゆうきに大切な秘密を教えてくれたのです。
天国のおじいちゃんと40年ぶりに会ってダンスがしたい、という秘密のお願いごとです。
何とかおばあちゃんの夢を叶えてあげたいゆうきは、お母さんに相談したいところをぐっと我慢して孤軍奮闘します。読んでいる方がさすがに無理なのでは、と思う頃、劇で使った魔法使いの帽子がゆうきを導いていってくれます。そしてついにたなばたの夜・・・!?
少し不思議な体験をしながらも、おばあちゃんの夢を叶えるためにどんどん行動していくゆうきの健気さ。それを優しく手助けするお友だちやお母さん。一心にお願い事をするみんなのそんな姿に胸を打たれていると、最後のおばあちゃんからの手紙に思わず涙があふれてしまいます。
子どもには、こんな風にまわりの世界を動かしてしまう力があるんですね。そして、そんな子どもの感情を素直に受け入れ、生きる力がどーんとわいてしまうおばあちゃんの豊かな感受性にも感動してしまうのです。ゆうきからおばあちゃん、そしておばあちゃんから読者へとそのパワーは伝わってきます。
丁寧に描かれたゆうきとおばあちゃんの心の交流はもちろん、登場するみんなの表情や仕草、そして色彩豊かに描かれた風景はとても魅力的。特にたなばたの夜に起きた奇跡の場面は、素敵すぎてしばらく頭から離れそうにありません。たばたせいいちさんの作品の魅力が存分に味わえる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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