ぼくのおじいさんは銅版画家。色をぬる手伝いをしているうちに、ぼくは絵の中をさまよって……。少年と祖父を案内役に、銅版画家の仕事を紹介した絵本。巻末に製作過程の詳しい説明があります。
『THE ETCHER’S STUDIO』が原題。
「ぼく」は毎年おじいさんの仕事のお手伝いをするのです。
おじいさんは銅版画家、ということで、その作業の様子が描かれます。
もちろん、作者も銅版画家ですので、それらが全て、銅版画で描かれているのです。
銅版画というのは、銅版に下絵を写し取り、その線に沿って道具で引っかき、
さらに化学薬品で腐食させて凹部分を作り、そこにインクを残して
印刷する版画のこと。
なかなか工程がたくさんある作業です。
読者も、「ぼく」の視点から、その様子を知ることができます。
−気がつくと、絵の中をさまよっている。
「ぼく」のワクワク感が伝わってきて、素敵です。
私も学生時代、銅版画を見る機会があり、その工程が知りたくて、
芸術学の先生を質問攻めにしたことがあります。
(一般教養科目だったし、試験には出さないと言われましたが。)
銅版画って、それだけやっぱり魅力的なんですね。
描かれた作業場には、作品もたくさんあり、作者のほかの作品の絵も見つけて
嬉しくなりました。
なにより、おじいさんに褒められた「ぼく」の嬉しさも伝わってきました。
嬉しいことに、巻末に用具の名前や、工程の解説まであります。
化学薬品のビンの危険物マークが、妙にリアリティがありました。 (レイラさん 40代・ママ 男の子17歳、男の子15歳)
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