「すてきなさんにんぐみ」でおなじみ、トミー・ウンゲラーと言えばお洒落で洗練された絵とスパイスの効いたユーモアのお話のイメージ。
でもこの「オットー」はちょっと様子が違う様です。表紙のクマもかなり薄汚れています。どうやらウンゲラーの半生を基に創った自伝的絵本らしい。
オットーはドイツの工場でつくられたほんもののテディベア。デビッドという男の子の誕生日のプレゼントとして贈られます。そして近所に住む親友のオスカー。この3人のたどる運命をオットーの目を通して語られます。
3人が仲良く遊び幸せな日々を送っていたある日、デビットが「ユダヤ人」ということで家族と強制収容所に連れていかれてしまいます。オットーを頼まれたオスカー。残された2人もまた空襲に遭い、離ればなれになってしまいます。オットーは戦火に巻き込まれながら色々な人の手に渡ります。そして数十年経ち、すっかり古くなったオットーがアンティークショップに売られ、ウインドーに飾られていると・・・。最後にうれしい奇跡が起こります。
戦争がこどもたちの平穏な日々をいかに振り回してきたかが伝わってきます。そしてオットーを手にする色々な立場の人の様子も見えてきます。それでいてストーリーとしても感動を呼びます。ウンゲラーが語らなくては、と思ったのも納得。読まなくてはいけない話というのはあると思います。
それにしてもヨーロッパの人達のテディベアに対する敬意の高さに感心してしまいます。色々な思い入れがあるのですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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