「何故かしら 和にひかれる 今日この頃で ございます」
ふすまを開けて膝をつき、つぶらな瞳でこちらを見つめてごあいさつする柴犬・・・
もとい、しばわんこ!
この衝撃のかわいさ、しかも和をこよなく愛しているという意外さに射抜かれてしまった絵本ファン、柴犬ファンが、日本中にどれだけいることでしょう。
2000年、雑誌「MOE」に登場して以来、絶大な人気を誇るシリーズ。
「しばわんこの和のこころ」は、記念すべきしばわんこデビュー作です。
「おもてなしの第一歩は 掃除から始まります」
あねさん被りをしたしばわんこ、せっせとお庭のはきそうじから。
いつお客様がいらしてもいいように、外もうちもきれいにしておかなくちゃ・・・
そうこうしているうちに、いらっしゃいませ、お待ちしておりました!
やってきたのはお客様!じゃなくて、集金に来た新聞配達の少年のようだけど。
せっかく来てくださったんだから、奥の和室へお通ししましょ。
目に美しい季節の和菓子にはやっぱり緑茶、さぁ、どうぞ。
「ありがとう」
もてなす心と応える心が、和の空間に溶け合う瞬間です。
専門書を読んでも小難しくハードル高く感じてしまうお作法。
なのにしばわんことみけにゃんこが一緒だと、どこか懐かしく、温かく、恋しく感じるのはなぜでしょうか。
イラストレーターをされていた作者川浦良枝さんは、この作品が初めての絵本。
丁寧な豆知識や解説とともに登場する和の小物や食べものたちは、レトロなのにモダンで洒落ていて、
古の時代から愛され続けている日本文化のデザインや色使いに、思わず胸がときめきます。
冬から春、夏、秋と移り行く季節とともに、陽の光、草花、着物の模様や色合い、
おはなしの中で、自然とくらしが調和した情景が移ろってゆく静かで温かな時間の流れも、心地いい。
圧巻は各季節に描かれているラストシーン、絵本をめくりながら優しい季節の風に包まれます。
和の心を持った柴犬に、ちょっぴりやんちゃな三毛猫。
ゆったりと四季を味わいながら暮らす2人(?!)の周りには、
やっぱり和が大好きで、明るくて、そしてちょっぴり大人の事情を抱えたりした仲間たちが集ってきます。
登場人物たちが暮らしの中で織り成すストーリーからも目が離せない「しばわんこ」シリーズ、
この後につづく続編の数々も、魅力尽きない和の世界へと、あなたを連れ出してくれますよ。
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
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