海をみおろす丘の上にある、小さな家に住んでいるのはルピナスさん。ルピナスさんは小さなおばあさんですが、昔からおばあさんだったわけではありません。
子どもの頃のルピナスさんのお気に入りの場所は、おじいさんの仕事場。夜になると、ルピナスさんはおじいさんから遠い国々のお話をしてもらい、終わるとルピナスさんは必ず言いました。
「大きくなったら、わたしもとおいくににいく。
そして、おばあさんになったら、海のそばの町にすむことにする」
大人になって働きはじめたルピナスさんは、世界中を旅してまわり、そのあと海辺の小さな家に住み、おじいさんとの約束を果たします。でも、おじいさんとの約束には3つ目があったのです。
「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたい」
いまでも、それほど悪くないのに。いったい何をすればいいのでしょう。痛めた背中の調子が悪くなり、寝て過ごすことも多くなっていたルピナスさんでしたが、春になるとお散歩ができるようになるまで回復します。そして丘の上に立った時にルピナスさんが見たものは……?
青、紫、ピンクの花を咲かせる華やかな「ルピナス」のイメージと、一人の女性の生き方を重ねて描きながら、「生きる」ということの意味を美しくしなやかに語りかけてくれるこの絵本。その目的を果たすためには何をしたらいいのか、そう考えていくだけで道はおのずと開け、前へと進む力がわいてくるのです。
道がわからなくなり立ち止まってしまう瞬間というのは、誰にでも訪れます。そんな時にふと思い出す絵本があるというのは幸せなことです。私の場合は、どうやら『ルピナスさん』のようです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む